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人事制度作成マニュアル

人事制度を構築するには、企業それぞれの特徴は何なのかを考え、その企業の特徴から最も適した制度を設計しなければなりません。特に、経営者の考え方、市場、商品、強みや弱みなどが重要なポイントになります。
例えば、どんなにうまく作られた人事制度も経営者の考え方に合っていなければ、運用の段階で設計と異なる方向へ変更されていってしまいます。
次の資料は、「職能資格制度」という日本の人事制度の基本ともいえる仕組みを題材にして、人事制度構築に必要な事項をまとめてみました。


・・・・・・・・・ 目次 ・・・・・・・・・・
■トータル人事制度とは
■職能資格制度とは
■人事制度構築の流れ
■人事制度構築のスケジュール
■制度構築の方針策定
■職能資格制度の設計
■賃金制度の設計
■人事考課制度の設計
■目標管理制度の設計
■導入の注意点

■トータル人


事制度とは

トータル人事制度とは、職能資格制度などの資格制度(*1)によって、人事管理上の社員の価値を明確にすることで、社員にはどのような能力を身につければよいのかといった将来像を与え、仕事の遂行結果を正しく評価し、合理的な人事管理を行うものです。
望ましい社員像を示す
  ↓
望まし社員像と比較して社員の行動、仕事の結果などを評価する
 ↓
評価結果から、効率的な人材育成、公平な処遇などを行う

具体的には、資格制度を中心にして人事評価基準や昇進・昇格などを互いにリンクさせることによって「人事評価」「賃金」「配置」「人材育成」といった人事制度全体を互いに関連づけながら運用します。

*1 人事制度運用の基準。従来の年功序列の人事では年齢が昇給や昇進など運用の基準となっていました。年功序列を廃止するためには、年齢という誰が見ても間違いのない絶対的な尺度に代わり、社員を測る基準が必要になります。年齢に代わり社員にそれぞれに等級(資格)を与えようというものが、資格制度です。

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■職能資格制度とは

「職能資格制度」とは、会社が期待する職務遂行能力(*1)を職能基準書(*2)にまとめ、この職能基準書よって社員1人ひとりを格付け(*3)し、「評価」「育成」「発揮」「処遇」という人事管理を実施する制度をいます。
最近では、「成果主義」を唱える風潮にありますが、年功序列を脱しきれない企業や成果主義は厳しすぎると考える企業、あるいは幹部には成果を求めるが採用後しばらくは能力育成が重要と考える企業などには、まだまだ必要な制度といえます。

*1 「職能」ともいいます。社員の従事する職務を遂行する上で、純粋に必要な能力を抽出します。
*2 職能資格制度における職務遂行能力をまとめたものをいいます。
*3 社員へ等級を与えることをいいます。

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■人事制度構築の流れ

企業環境の調査 / 経営者の理念方針確認
 ↓
仕事調べと問題点の洗い出し
 ↓
制度概要と構築方針の策定
 ↓
格付基準の作成 → 人事考課制度の設計 → 目標管理制度の設計
 ↓
仮格付け
賃金制度の設計
 ↓
 ↓
退職金制度の設計
 ↓
総合的な調整・修正・移行措置の検討 ← ← ←
 ↓
諸規程などの作成
 ↓
制度の説明会・管理者など考課者訓練
 ↓
導入

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■人事制度構築のスケジュール

人事制度の構築は、企業の規模により大きく異なります。また、時間を要するのは主に企業の社内での検討、コンセンサスを得るための活動時間です。次の表は、100名ほどの企業におけるスケジュールのサンプルです。

1ヶ月目 

企業環境の調査
経営者の理念方針確認
仕事調べと問題点の洗い出し
2ヶ月目 制度概要と構築方針の策定
3ヶ月目 格付基準の作成
4ヶ月目 仮格付け
5ヶ月目 賃金制度の設計
基準書と賃金制度の修正
6ヶ月目 退職金制度の設計
7ヶ月目 人事考課制度の設計
8ヶ月目 目標管理制度の設計
9ヶ月目 総合的な調整・修正・移行措置の検討
10ヶ月目 諸規程などの作成
11ヶ月目 制度の説明会・管理者など考課者訓練
12ヶ月目 導入

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■制度構築の方針策定

人事制度構築の方針は、最も重視すべき事項です。新たな制度の導入が社員へどう影響するべきと考えるかは、慎重に検討しなければなりません。
およそ、次の様に進めます。
@ 企業環境の調査
A 経営者の理念方針確認
B 仕事調べと問題点の洗い出し

「仕事調べ」(職務調査)は、社員の構成、仕事の種類などを判断するために重要な作業です。社員全員に調査票を配布し、1週間程度の日々の業務を記入してもらい、その内容を検討します。
「問題点の洗い出し」は、社員意識を把握するために「アンケート」などを実施します。経営、人事、、管理者、福利厚生などについて調査し、現在経営者が感じていることが、本当に人事制度の改革で改善されるかを確認しておくことも重要です。万一、人事制度よりも管理職の力不足などに原因があれば、まずは管理職の教育から検討をするべきなのです。
 これらの作業から、問題点のなかでも重要な問題が人事制度によって解決されること、今後の企業経営に沿った人事制度の構築方針を策定します。 

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■職能資格制度の設計

1.職能フレームの設計
職能フレームとは、職種、階級、職位など、全体的な構成をいいます。
まずは、全体像を構想することからはじめます。
等級数を決定する場合、100人程度なら8等級前後でいいでしょう。ただし、社内の管理職、専門職などを区分していき、独自に検討するべきです。

2.職能基準書の設計
職能基準書は、最も作成が難しい部分です。総務としてどれだけ社内の業務を熟知しているかが問われます。
考え方としては、次の図のように、社内の全ての職能を細分化していきます。

「会社の職能を 「さらに2分割 「さらに2分割 「等級」
2分割する」 する」 する」
非定型業務 企画調整 十分 8等級
不十分 7等級
応用判定 十分 6等級
不十分 5等級
定型業務 定型判定 十分 4等級
不十分 3等級
単純/反復 十分 2等級
不十分 1等級

つまり、1等級の社員の職能基準は、単純/反復的な定型業務が不十分(上司の指導を受けながら、またはさほどの経験を要しない程度)にこなす者ということになります。
そして、実際に記述していく内容は、まず職種をいくつに区分するかを検討します。同じような仕事をしていて、管理上も同じ取り扱いが出来れば、1枚の基準書にすることが出来ます。その職種や職群について、最も重要な能力を「単位業務」として10弱決め、それぞれの単位業務、ランクごとに記述していきます。

3.呼称や運用方法を整理する
社内で運用していく上で必要な事項を決定していきます。従来の人事制度から切り替える印象を強めるうえでも、呼称なども大切な事項です。
そのほか重要なことは、昇格(*1)基準です。
昇格の基準としては、最低滞在年数、人事考課基準、精勤基準、役員面接などがあります。これらをクリアーした者について、新しい事業年度など、一定の日を定め昇格させます。

*1 昇格とは、一定の条件をクリアーすれば、現在よりも上の等級に変更していくことをいいます。逆に等級を下げることを「降格」といいます。

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■賃金制度の設計

賃金の設計は、いろいろな角度から検討する必要がありますが、考え方としては次のとおりです。
@ 賃金体系を決定する(基本給、諸手当など)
A モデル水準を決める
B モデル昇格ごとのピッチを決める
C 範囲給の上限を決定する
D 評価ごとの昇給額を決定する
E 新賃金制度の支給総額、昇給予測から確認する

1.賃金体系を決定する
賃金体系とは、基本給、諸手当などの構成をいいます。管理職に年俸制を導入する場合なども、ここで検討しておきましょう。第一には基本給の構成が大切です。職能給以外に、年齢給や勤続給を持つ場合もありますが、これらは年功的な要素を残すことになりますし、現在のように定期昇給が難しい時代では、会社の支払い能力を圧迫する場合があります。
第2に、諸手当は、あまり数を増やさないことです。必要最低限で、基本給による平等性を確保できない部分を補足的に支給したり、会社の方針によって家族手当など仕事に現れない部分を支給します。 

2.モデル水準とピッチを決まる
モデル水準の最初は、初任給と40歳課長程度のモデル社員の賃金を決めることから始めます。
次に、例えば、18歳高卒の賃金を16万円、40歳課長が40万円とした場合、年齢給を持つのであれば、18歳=16万円を、4万円の年齢給と12万円の職能給、40歳=40万円を、年齢給20万円、職能給20万円などと、基本給のモデル水準とします。
この場合、年齢給が均等に昇給するようにするとき、20万円−4万円=16万円、40歳−18歳=22年間ですから、16万円÷22年間=7,272円が年齢給の昇給ピッチということになります。
職能給は、年齢給をモデル水準から控除した部分です。
18歳、16万円−4万円=12万円、40歳、40万円−20万円=20万円、20万円−12万円=8万円
で、8万円が昇給合計、8万円÷22年間=3,636円が平均昇給ピッチとなります。これを見ると、年齢給を設けることで、職能給の昇給幅がずいぶん小さくなることが解ると思います。
職能給の昇給ピッチは次の表のように決定していきます。
期間×昇給ピッチ=期間合計、期間合計のトータルが職能給の昇給幅になります。
このような設計は、例では6等級までとなっています。8等級まである場合、7等級、8等級は、昇給ピッチを増やして決めればよいのです。
等級 期間 昇給ピッチ 期間合計
2,000 4,000
2,500 5,000
3,000 9,000
3,500 14,000
4,000 20,000
4,500 27,000
合計 22   79,000

昇給合計79,000≒80,000
(表1)

3.範囲給の上限を決める
等級ごとに上図の期間合計を加算していった金額が、範囲給の下限の金額となります。上限の金額は、号俸表を使う場合は、標準滞在年数の2〜3倍程度を上限とすればよいでしょう。または最上級の最高額から、等級ごとの重なり具合を考えながら逆算していってもよいでしょう。次のような範囲給表ができあがります。
等級
下限
上限
120,000
135,000
124,000
145,000
129,000
160,000
138,000
180,000
152,000
210,000
172,000
260,000
199,000
320,000
250,000
500,000

(表2)

4.昇給表を作成する
昇給表は、人事考課の結果に基づき昇給額を定めたものです。
(表1)で作成した等級ごとの昇給ピッチが標準的な昇給額となりますから、評価をS、A,B,C,Dの5段階とした場合、標準評価のBの昇給額になります。後は、会社が評価によりどれくらいの昇給差を設けたいのかなどによって次のような表を作成します。

《昇給表》
等級 評価
2,600 2,300 2,000 1,700 1,400
3,100 2,800 2,500 2,200 1,900
3,600 3,300 3,000 2,700 2,400
4,100 3,800 3,500 3,200 2,900
4,600 4,300 4,000 3,700 3,400
5,100 4,800 4,500 4,200 3,900
5,600 5,300 5,000 4,700 4,400
6,100 5,800 5,500 5,200 4,900

(表3)


5.設計した賃金制度を確認する
設計が終わっても、必ず設計した制度の確認をして下さい。
まずは、等級ごとの範囲給に全ての社員が収まっているか、賃金を移行した場合、支給賃金総額はどうなるか、来年、再来年の昇給額を予想した場合どうなるかなどです。
例えば、次の表に社員の賃金をプロットした場合、緑の範囲給に入っていない社員がいます。範囲のしたに出ている者は、その等級の下限まで、制度移行時昇給します。逆に、上にある者は、移行時上限まで降給することになります。ただし、賃金を急に考究することは不利益変更として認められないことが多いですから、一時的にはその金額を補償することになります。 



範囲給








等級

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■人事考課制度の設計

人事考課とは、社員それぞれの評価期間での業績などを評価し、人事制度の運用に必要な個人情報を把握するための手段です。
これから、どのような育成が必要なのか、また業績などに酬いて賃金をどれだけ払うかなどを決定することができます。重要なことは、人事制度というものが社員の育成こそ第一の目的であり、人事考課も人材育成を第一の目的として実施しなければなりません。おうおうにして賃金の決定が先行し、評価結果の本人へのフィードバックもなく、経営者も社員の不満ばかりに敏感になった運用が見受けられます。
では、人物のどのような部分を評価するのかというと、多様な人物の能力を評価し数値化するために、一般的には次の3つの要素に大別され評定されます。

@能力評価、 A情意評価、 B業績評価

1)能力評価とは、「知識」や「技能」といった能力を評価します。
2)情意評価とは、「積極性」「協調性」「規律性」「責任感」といった仕事に対する意欲や適正を評価します。主に、業績評価が難しい職能等級の低い社員について、仕事への取組姿勢、今後の成長性などとして評価します。
3)業績評価とは、一定期間の仕事の出来映えを評価します。仕事の出来映えとは、丁寧にできたかという「質的評価」と早く多くできたかという「量的評価」に分かれます。
また、それぞれの目標を設定している場合は「目標達成度」として目標管理の成績を連動させます。
具体的には、人事考課シートを作成し、1年ごとまたは半年ごとに評価を実施します。
人事考課の実施している企業にとって、最も頭を悩ませているものは、ほとんどが正しく評価ができているかということです。
正しい評価を行うためには、評価者訓練が欠かせませんが、この評価者訓練も観念的なものになって、あまり成果を果たしていない場合が多いでしょう。
まず、業績評価を実施するには、職能基準書と職能要件に沿ったそれぞれの等級ごとに発揮すべき業績が明確になっていなければなりません。また評価結果を社員が納得して受け止めるには、事前に評価の基準を明確に示しておくことです。情意評価なども同様です。
逆に、非常に細かい評価基準を作成している企業がありますが、あまり細かすぎて評価者が覚えきれないようなものもいけません。いずれにしても、評価の苦労を乗り越えるだけの努力は必要ですから、根気よく取り組まなければなりません。

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■目標管理制度の設計

目標管理とは、企業の方針から社員1人ひとりが「個人の果たすべき役割」を導きだし、自ら目標を設定することで「チャレンジ精神」を育成し、それぞれの社員が目標を達成することで企業目標を達成するというものです。
最近では、人事考課と一体になったものが多く、人事考課の1項目である業績評価として、いわゆる「成果主義人事」の中心に位置づけられています。
具体的には、会社方針から部門方針、部門方針から課の方針へと、方針をブレークダウンし、それぞれの部門や立場ごとに、個人個人の役割を分担し、その役割を果たすための個人目標を設定していく方法です。 

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■導入の注意点

新しい人事制度を導入するにあたり、いくつか注意を申し上げます。
まず、最も重要なのは社員に対する影響です。
現在のように、厳しい経営状況で改革される人事制度は、間違いなく現状よりも厳しい制度を導入することになります。
このような場合に、注意すべき事は、これから導入する制度が会社業績を向上させ、社員を豊かにするためのものであること、努力する社員を高く処遇していくことなどを、はきっり社員へうったえることです。
そして、評価結果については社員本人へ公表し、公平公正な人事制度をとることを実施することです。
これを怠っては、単に社員を動揺させ、場合によっては社員の重要な人材を退職させてしまうことになります。
また、人事制度の変更は、労働条件の不利益変更として、民事上の契約違反となる場合があります。
このような不利益変更とみなされないためには、変更の必要性、経過措置を設けること、代替措置を設けることなどが必要です。特に賃金は重要な労働条件ですから、賃金の低下する者には、3年程度の経過的な猶予措置を設け、その期間にその者が努力すれば、賃金低下を免れるようにしておくことが必要です。

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